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◎ 2014年6月6日 (金) 芸術の限界

音楽、絵画に共通するのは、感動である。
感動とは、感情を動かす事である。
文学において、それに該当するのは、感傷主義だけである。
ツルゲーネフや本居宣長などがそれである。
トルストイや芥川龍之介などは、感傷ではなく論理だから、芸術ではなく哲学である。
文学には、芸術と哲学の二系統が存在するのである。
芸術家が客に求める感動とは、苦痛や悲哀の共感の事である。
しかし、経験は、経験した者にしか分からないものであり、同じ経験をした人には伝わるが、そうでない人には伝わらないどころか、芸術家の苦痛や悲哀が、却って快感に感じられるものである。
その結果、芸術家は、ますます絶望して、芸術を捨ててしまうのである。
哲学者も社会変革に終始するなら、同様の結果になる場合がある。(太宰治など)
しかし、自分の人生観として充足するなら、その人生観をそれを必要とする人々に教えてやるだけで済む。
その充足の条件が、天罰メカニズムの知識である。
権力主義者には天罰が下るから、権力主義者にはなれないという事である。
ただし、これは、自分の思考や経験に基づいて自分で確立した知識でなくてはならない。
その方法は、完全無欠の自分を作る事である。
芸術家と哲学者の目指すところは、権力主義の消滅であり、手段が感動か論理かで違うのである。
手段だけでなく、芸術家は感情的に哲学者は論理的に権力主義が間違っていると考えているのである。




◎ 2014年6月6日 (金) 非エリート労働者の処遇

日本に限らず、世界の大半は、官僚主導経済であり、人間関係による雇用形態になっている。
大企業の社員は、官僚が会社を守ってくれるため、実力がなくてもコネさえあれば良いのである。
中小企業の大半も、その大企業から仕事を貰っているから、こちらもコネ入社である。
しかし、官僚には商売勘がないから、経済運営に失敗する可能性が高い。
ルネサスの失敗は、その典型である。
この失敗は、日本家電メーカー各社に大打撃を与えた。
また、権限の集中は、リスク分散の上でも問題である。
官僚主導経済が当てにならないばかりか、企業そのものに優秀な人材がいないから、国内経済が現在のように衰退する羽目になる。
また、FA(工場自動化)が進行すれば、労働力が不要になり、世界的に失業率が高止まりするのは当然である。

官僚主導経済脱却とFAによって、非エリート労働者は、生産活動に不要となる。
これは、避けられない問題だから、諦めるしかない。
しかし、彼らも人間として生きる権利があるから、そのための最低限の生活保障が必要である。
国家があっても、企業による社会統治であっても、同じ事だが、その対策として実存主義社会が必要である。
この社会は、国家や企業からの助成も受けるが、基本的に住民によって運営される。
それによって、更に生活コストを下げられ、労働スキルも取得できるからである。
十分な教育も受けられるようにすれば、ここで育つ人々も将来はハンディなく就職できる。
また、安定した生活が送れる為、十分に準備した上で、起業する事も可能になる。
実存主義社会の住人も、中間層と遜色ないくらいに財産を持てるから、消費も極度に停滞する事がない。
実存主義社会があれば、老人と失業者の区別がないから、退職金と年金基金は不要である。

もし、実存主義社会が非エリート労働者によって否定されるなら、国家破産の後、国民は既得権者と非既得権者に分断され、内戦に突入し、際限なく、国富が失われ、発展途上国並みに衰退するだろう。

非エリートは不要と書いたが、実際は、エリートよりも非エリートの方が上手くやれる職種も多いから、常に非エリートよりもエリートの方が仕事に恵まれるという事はない。

ワークシェアリングによってスキル修得を狙う方法もあるが、職業訓練所のような専門機関が、例えば、洋服店に有償で協力してもらって、店舗で店員スキル教育をできるようにした方が、より短期間、より確実に修得できる。
協力会社を変更すれば、最新スキルの修得も可能になる。




◎ 2014年6月9日 (月) グレーゾーン事態

日経新聞(6/6)
『政府が与党に提示したグレーゾーン事態の事例
@武装集団が離島や本土に上陸
A公海上で訓練中の自衛隊が、武装集団に襲われる日本の民間船舶に遭遇
B平時に、日本近隣国が弾道ミサイルを発射する兆候があり、自衛隊とともに警戒にあたる米艦の防護』

グレーゾーン事態において自衛隊を使えるかどうかという問題である。
@は、中国軍が尖閣諸島に上陸した場合である。
ここで、自衛隊が中国軍と衝突して、万一、自衛隊に死者が出ようものなら、右傾化している日本国民は中国との全面戦争を叫び出すだろう。
その声を抑えることはできないに違いない政府と与党は、その責任が取れるのか?
いきなり自衛隊を動かすよりも善後策を考える方が先ではないか。
Aは、公海上の日本漁船が中国軍に拿捕された場合である。
尖閣諸島の領有権が日中のどちらにあるかで公海の線引きも違ってくるのではないか?
だとしたら、公海の領域が明白ではない海域に日本の漁船が入り込まないように注意するのが自衛隊の役目だろう。
これも一歩間違えると全面戦争の火種になる。
Bは、北朝鮮の事だろう。
北朝鮮艦船が出撃して来た場合だろうか?
その場合は、北朝鮮が主力艦隊を向かわせる可能性があるから、米艦も自衛隊も、即座に逃げるべきである。
弾道ミサイルの流れ弾がたまたま当たった事を想定しているなら、米海軍を救助するだけで良い。




◎ 2014年6月12日 (木) 極右は左翼

極右については、Wikipedia を参照。
現在、フランスやイギリスで極右が台頭している。
EUにおける極右とは、移民受け入れと外国への資金援助に反対する事である。
フランス政府は、ルノー傘下の日産にフランス国内に工場を作るように指示した。
イギリスでは、銀行などの金融機関による大規模な不正が横行した。
これらの事は、フランスやイギリスも日本同様、政府が経済に対して大きな権限を持っている事を示している。
つまり、イギリスやフランスも実質国営企業が多い国々なのである。
国営企業は、政府が仕事を与えたり、政府が技術革新を主導したり、参入規制などで守られたり、公的資金注入で倒産を免れたりするため、社員に実力がなくても存続できる。
しかし、キャリア官僚が、これらの企業経営を間違えると、たちどころに経営が行き詰る。
しかも、官僚には企業経営に適性がない。
そのため、実質国営企業の多い国は、国内経済が行き詰まり易く、その低迷も半永久的に続く。
政治家や官僚に経済を任せるのは、非合理的であり、彼らの干渉を排して実力主義に徹するのが合理的なのである。
経済圏内において、域内の国を跨ぐ人の移動は、国家間の経済格差を是正するために必要である。
さもないと、経済競争力の無い国は、それがある国から一方的に輸入するはめになり、債務危機に陥るからである。
ギリシャ債務危機においては、ユーロが売られ、ユーロ存続危機に陥った。
人が外国に移動する事で、その国の人口が減るため、財政支出が減り、出稼ぎに出た人々は働く事でスキルを取得し、有能な人材になり、いつかは母国に戻る可能性もある。
経常収支の赤字により財政難に陥った国々に同じ経済圏内の富裕な国々が資金援助しなければ、財政難の国々はデフォルトを起こすはめになる。
その国々と同じ通貨を使う国々は、多大な迷惑を被るはめになるから、その国々を切り捨てようとする。
しかし、デフォルトを起こした国々を次から次へと切り捨てれば、いずれ、経済圏参加国は限りなく減少する事になり、最終的には解散するはめになる。
そうすると経済圏参加国は、大きな市場を失い、仕事がなくなった自国の産業は衰退する事になる。
そのため、経済圏においては、域内他国への人の移動と資金援助は合理的である。
イギリスやフランスは、国民性が合理的でないため、国内においてもEUに対しても合理的に対処できないのである。
国内に実質国営企業が多い状況は、その国が左翼である事を示し、同じ経済圏の国々に対する移民排斥と資金援助反対は、その国が極右である事を示す。
つまり、イギリスやフランスは、国内的には左翼で、EU的には極右なのである。
保護主義によって弱体化した国内企業を守るため、財政が悪化し、国民不満を逸らす目的で外国を仮想的とするため、国内的左翼は対外的極右になる。
左翼には、共産主義とファシズムとコーポラティズムがあるが、その内、ファシズムとコーポラティズムが極右になる。
イギリスとフランスは、コーポラティズムである。

イギリスやフランス以外にも日本やアメリカが実質国営企業の多い国内左翼である。
これらの国々では、大企業は、公的資金の注入を受け、存続できる。
アメリカも現在、移民排斥傾向が強まっているし、日本も反在日運動が活発である。
移民排斥は、移民に仕事を盗られるという意識があるからである。
中国やロシアも経済圏を作ると極右化するのは間違いないだろう。
左翼は極右なのである。
その共通点は、非合理性である。
国内左翼は、高所から物事を見る訓練が必要である。
現在、世界中がナチズム化、ファシズム化している事になるが、特に日本とイギリスとフランスが顕著という事だろう。

一般的に、倒産とは会社更生法が適用される事を指す。
しかし、会社更生法とは、ただの行政主導リストラの事であり、会社が消滅するわけでも会社のイメージに傷がつくわけでもない。
むしろ、イメージが向上し、株価も上がる。
日本においては、行政主導リストラは威力絶大で、世界中から羨望を集めている。
なぜか、行政主導リストラでは、労働基準法は完全に無視されるらしい。
哀れなのは、リストラ社員である。




◎ 2014年6月12日 (木) ジャパン アズ ナンバーワン(4)

エズラ・F・ヴォーゲル「ジャパン アズ ナンバーワン アメリカへの教訓」TBSブリタニカ

p.103『日本には現在トヨタ、日産、ホンダ、いすゞ、三菱、東洋工業の六社があるが、通産省はこれを(合併により)二つか三つに減らそうとして失敗に終わった』

業界の寡占化のために行政主導で合併させるのは不公平である。
不況カルテルも同様である。
これらの行為は、その業界への起業や参入を阻むからである。
一部の業界だけが行政によって保護されれば、別の業界で起業や参入がし易くなり、産業構成や競争力の偏りが生じる。
ホンダが自動車業界に参入しようとした時、業界の寡占化を目論む行政の妨害に遭ったが、本田宗一郎が押し切ったそうである。
理容店でも、洗髪しない店でも洗髪台設置が義務付けられているのは、参入妨害が目的という話である。
阿倍首相は、過当競争を否定し、不況カルテルも認めたが、これらの経済指針は、不公平な業界保護の考え方である。
消費増税後のコスト上乗せ要請も、業界保護政策である。
自由競争を阻む事で、一部の業界のみ保護するのでは不公平である。
また、競争がなくなる事で、その業界では無能社員が増え、有能社員は社外に捨てられる事で競争力を失う。
これは、大政翼賛会のコーポラティズムであり、ファシズムと同様の問題が生じる。
アベノミクスでは、第三の矢として規制緩和を挙げていたが、これと逆行する。
実際、阿倍政権においては、規制緩和よりも規制強化の方が比重が大きい。
一連の発言から、阿倍首相が規制緩和に舵を切る可能性は皆無であると思われる。
阿倍政権の規制緩和方針に期待して外資は日本株を購入したとされているが、それが逆行している現状でも外資が日本株から引かないのは、別の理由からだろう。
現時点でも外資は、円売りと日本株購入で大損している。
自民党は、大政翼賛会のように、ぎりぎりまで業界保護に徹した後、財政破綻直前に外国に侵略するつもりでいるのかもしれない。




◎ 2014年6月21日 (土) 中国政治(2)

日経新聞(6/2)に、香港民主デモの記事がある。
近年、中国政府による香港行政干渉が増える傾向にあるらしい。
香港出版社弾圧事件の頃から予兆はあった。
中国では、資本主義導入で貧富の差が大きくなったため、貧困層の不満を抑えるため、多額の財政出動が必要である。
そのため、経済が順調な香港のカネを中国が狙っているのだろう。
これの意味するところは、習政権は強権政治のように見られているが、実際は貧民層に振り回されているという事である。
習政権は、政権基盤が磐石でない事が当初から囁かれており、そのため、対抗勢力の不正を厳重に取り締まったり、チベットやウィグルに強硬な態度をとったりして、強い政権を演出する必要がある。
強権政治は、中国の伝統であり、毛沢東も国民の支持を得るために、その路線をとった。
中国の影響を受けて、日本や韓国にもそういう伝統がある。
しかし、その強い習政権は、貧困層の突き上げには、全く頭が上がらないというわけである。
官僚主導行政においては、各省庁への予算配分は、各省庁の官僚が決めてしまう。
それでは、政権に大きな影響力を持つ貧困層に配慮した予算編成はできない。
習政権が、行政の主導権を握れるなら、先ず、内需活性化と貧困層配慮の政策を考え、それに合わせた予算編成を組み、官僚の意見を無視するやり方も考えられる。
この政策は、プライマリーバランスも考慮すべきである。
しかし、この独裁手法は、現実を無視して非常に危険なため、最も悲惨な結果をもたらす可能性も高い。
しかし、良く練られた政策であるなら、一度だけ試す価値はあるという考え方も一考の余地がある。
しかし、二年、三年と繰り返すのは、間違いなく国家を滅亡させる事になるだろう。
これは、共産主義と同じ実験政治である。
こんなやり方よりも、ゆっくり時間を掛けてやる方が無難だろう。
内需活性化と貧困層配慮の両立とは、実力主義と実存主義社会の並立の事である。
官僚主導経済では、官僚にコネがある企業は倒産しないため、社員の人事と給与はデタラメになる。
これでは、社員のやる気が損なわれる。
そのため、実力主義に切替える。
また、貧困層は、定収入が期待できないため、将来のために極度に節約し、内需を低迷させる。
そのための実存主義社会である。
香港やマカオは、日本における政令指定都市である。
不景気になると世の中はワークシェアリングなどをしているのに、政令指定都市の財源だけが他の地方都市に回らない事が不公平に思われてくる。
香港やマカオに中国政府干渉圧力が高まるのは、その意味では、必然かもしれない。
しかし、仕事を頑張ったら頑張った分だけ中国政府に搾取される状況になるなら、社員のやる気が損なわれ、共倒れになる可能性がある。
財産の有る所から無い所にカネを移すだけでは、政治は成り立たないのである。

フィリピンは、日本の自衛隊が国軍になるのに賛成し、日本が周辺諸国と安保条約を結ぶ事を望んでいる。
フィリピンには、対中で軍事力を強化した日本と共闘したい思惑が見える。
ベトナムでは、対中デモが活発である。
アメリカにも日本に中国による侵略から、韓国、台湾、フィリピンを守るために自衛隊や軍隊を派遣してもらいたいようだ。
日本には、基本的に他国の利害や他国の資本主義のために自国の自衛隊や軍隊を派遣する意志はない。
その事は、対台湾政策や対チベット政策からも明らかである。
最近、南シナ海問題が緊迫している印象だが、各国の利害が明白でない。
中国が必要もないのに領土拡大のためだけに珊瑚礁を埋め立てているなら問題である。
先ずは、中国にその理由を問いただすべきではないか。
中国がチベットを侵略したように無意味な領土拡大路線に進んでいるなら、止めさせるべきだが、韓国も海没島を埋め立てているし、日本も岩を島に名称変更しているから、誰でもやっている事ではある。
最近、日中韓は、ケチな領土拡大戦略を採っているのである。
尖閣諸島問題で対話の余地を残していない日本政府が、南シナ海問題で中国に対話を促すのは矛盾している。
これらは、東亜では常識なのである。
フィリピンとベトナムは、日韓のそうした行為を非難する声明を出す必要があったのではないか。
弱小国家は、弱小国家なりの言動を採る必要がある。
あるいは、東亜常識に合わせるのであれば、大国に対抗するために軍事同盟を結ぶか、大国の属国にでもなる必要がある。
チベットも、日本の中国侵略に非難声明を出せなかったから、同じように侵略されたのである。
弱者や弱小国は、道理に頼るか、自ら強くなるかのいずれかの道しかない。




◎ 2014年6月21日 (土) 集団的自衛権(2)

日経新聞(6/15)に集団的自衛権は、以下の項目で詰めに入ったとある。
@邦人輸送中の米艦防護
A弾道ミサイル発射警戒中の米艦防護
B米本土が攻撃を受けわが国近隣で作戦を行う時の米艦防護
C武力攻撃を受けている米艦防護
D強制的な停船検査
Eシーレーンで戦闘下の機雷除去
F民間船舶の国際共同護衛
G米国に向かう弾道ミサイルの迎撃

@は、北朝鮮に米国が攻め込んだ時を想定している。
しかし、戦争中に移送するよりも、終結した後の方が安全である。
北朝鮮以外の場合は、日本が戦争中に日本に日本人を移送するのは危険であり、戦争とは無関係の国に移送すべきだろう。
その場合は、航路が安全なため、自衛隊が米艦護送をする必要は無い。
日本が戦争をしていないなら、誰も護送中の米艦を襲う心配は無い。
戦争中の米艦が危険なら、日本人を日本の民間船に乗り換えさせるべきである。
以上より、@は不要である。
ADは、「2014年6月9日 (月) グレーゾーン事態」と同じである。
BCGは、中国やロシアを想定しているのだろう。
これらを認める事は、日米が事実上、攻守同盟を結んだも同じである。
しかも、日米安保条約には、記載されていないから、結んでもいない攻守同盟に日本は従う事になる。
Eは、中近東の原油輸入ができなくなる状況を想定している。
戦闘地帯の原油を輸入するよりも、電力・ガス自由化により、原油調達地の分散を推進すべきである。
その方が、原油の価格交渉もしやすい。
Fも@同様に、日本が戦争中なら、日本に民間船を向かわせるのは危険である。
戦闘地帯に安全な日本から出向くジャーナリストや旅行者もいるのに、戦闘地帯から日本に帰る人を護送するのは筋が通らない。
それに、日本がその戦争と関係していないなら、日本の民間船が狙われる心配は無い。
日本が、戦争している事態を想定しているなら、もはや、日本は憲法を破棄したも同然であり、改憲以前の問題である。
日本の軍事面での国際貢献は、PKOで十分である。
戦争原因は、主に経済面にある。
日本は、戦争防止目的に普段から経済面で国際貢献できる。
中近東では、資本主義への反発からイスラム原理主義が台頭している。
資本主義を否定すると残るは、共産主義とファシズムとコーポラティズムだけである。
イスラム原理主義の目標が、鎖国ならば、NATOは、いずれ攻め込む事になるだろう。
日本もインドも中国も西欧から軍事力で開国を迫られた歴史がある。
東西冷戦も東側の鎖国が原因である。
鎖国をしたのでは、技術力で世界に取り残される。
技術力は経済力だけでなく、軍事力にも大きな影響を与える。
軍事力に劣る国は、勝る国から攻め込まれるから、技術力で世界から大きく劣るわけにはいかない。
世界の情報共有と移動が身近になった現代では、自国の問題解決のみを考えていたのでは成り立たない。
世界各国の抱える問題を並べて、世界中の人々がその解決策を考えなければならない時代である。
現代の問題は、世界各国の技術格差と国内の所得格差である。




◎ 2014年6月22日 (日) NATOがシリアに出撃しないわけ

日経新聞(6/19)
『(「イラク・シリアのイスラム国」は)アルカイダの中央司令部とたもとを分かった地方組織だ』

日経新聞(7/1)
『「イスラム国」は、29日、ウェブサイト上でバグダディ指導者をカリフ(予言者ムハンマドの後継者)とする政教一致国家を宣言した』

『「イスラム国」の宣言は第一次世界大戦に列強が決めた中東の国境と秩序への挑戦だ。英仏、露が1916年に交わした密約「サイクス・ピコ協定」をもとに生まれた現在のイラクやシリア、レバノン』

現在、イラクは内紛状態にある。
米軍による空爆でイラク軍が弱体化したからである。
リビアもNATO空爆で国軍が弱体化し、統治が不安定である。
空爆により、シリア国軍が弱体化するのを避けたのだろう。
カダフィ政権打倒によってイスラム原理主義が台頭するというカダフィ大佐の予言は、当たった。

湾岸戦争では、イランは多国籍軍に加わったが、今度の内戦では、イラク軍に肩入れするつもりである。
フセイン大統領失脚により、イラク統治権が、スンニー派からシーア派に移ったからである。
イラクの反政府軍「イスラム国」は、シリアの反政府軍から流れており、欧州諸国の策略により分断されたイラクとシリアを合併させるつもりらしい。
これも、アラブの春というわけである。
ただし、「イスラム国」は、元アルカイダな上に民主主義を否定し、選挙もしないようだから、反欧米の独裁軍事国家になる可能性が高い。




◎ 2014年6月22日 (日) グローバル企業の税金問題

グローバル企業が、法人税の低い国に納税本社を作る節税策が問題になっている。
この手法は、国際ルールには抵触しないらしい。
そのため、世界各国は、法人税減税によって納税本社の誘致合戦をしている。
各国政府も頭を抱えているが、あまり有効な手立てはないらしい。
その点、イギリスの消費者は、イギリスで大きな利益を上げた企業がイギリスに税金を払わないのは不正だとデモをし、その企業は、イギリスに納税本社を移した。
世界各国の政府にできなかった事をやり遂げたイギリス消費者の主張に注目すべきである。
彼らの視点は、法人税は当該国での経済活動の利益還元と定義したのが新しい。
これを国際ルールにすると、その企業が利益を上げた国に対して、その利益に応じた額の税金を支払う事になる。
このルールでは、納税本社は存在しない事になり、無国籍という点においてグローバル企業は名実共にグローバル企業となる。




◎ 2014年6月28日 (土) 国ごとの通貨の意味

現在、世界の多くの国々で変動相場制が採られている。
経済競争力のない国は、自国通貨が下がるから、輸入品が買いづらくなる代わりに、輸入品と同品質でも安い値段で輸出できる。
固定相場制なら、輸出入のし易さは、常に一定である。
そのため、変動相場制の方が、競争力の無い国にとっては、輸出し易くなるはずである。
しかし、実際は、競争力のある国は、関税やその他の業界保護策を採るため、競争力の無い国はあまり輸出できない。
そのため、競争力の無い国は、輸出入が共に低迷し、変動相場制の利点を失う。
しかし、両方とも低迷するという事は、経常収支もあまり悪化しないという事である。
しかし、供給不足からインフレが発生すると生活ができなくなるから、高くても輸入するとなると大幅な経常収支赤字になる。
いつかは、外貨準備も枯渇して輸入できなくなる。
外国から借金しても、これは構造的な問題だから永久にその返済はできない。
次に競争力のある国にとっての変動相場制の意味も検証する。
競争力のある国は、通貨高になるから、輸出品の値段は上がるが、輸入品は安く買える。
競争力があると言っても、業界ごとに競争力が違うから、競争力の無い業界は実力以上の通貨価値で輸出しなくてはならない。
結局は、輸出できないという事になる。
しかも、外国の同業者は、実力どおりの通貨価値で輸出して来るから、到底勝ち目が無い。
となると、国内でも国外でも負けて倒産せざるを得ないという事になる。
そこで、競争力のある国の政府は、国内の弱小業界を守るために保護策を駆使するのである。
しかし、競争力の無い国でも輸出できるようにして、国家間の貿易不均衡を是正しようとする変動相場制の趣旨からすると、これは反則である。
しかし、国ごとに通貨が決まっているため、国内の業界競争力格差を通貨価値に反映できないわけだから、政府は、競争力のある業界の利益をタダで競争力の無い業界に再配分せざるをえない。
これが、公共事業や地方交付税や関税や業界保護策などの既得権となるのである。
国ごとに通貨が決まっているという事実が、変動相場制の趣旨を台無しにするわけである。
変動相場制の趣旨に沿えば、本来、競争力ごとに通貨が存在しなければならない。
すなわち、企業通貨である。
農林水産業みらい基金が独自通貨を発行すれば、その通貨は円よりも価値が下がり、輸出しやすくなる。
中小企業連合も独自通貨を発行できる。
事業者の数が増えれば、信用も増すため、諸外国の産業とも同じ通貨を使う事ができる。
企業通貨を導入すれば、競争力と通貨価値が釣り合うため、関税も補助金も不要になり、既得権が消滅する。
世界的には、物資が不足している地域も多くあり、それらの地域にも先進国の物資が行き届くようになる。
企業通貨で国家通貨を駆逐すべきである。

競争力のある国の競争力のある業界にも既得権がある。
彼らは、政治家や官僚の手厚い保護を受けているからである。
多額の税金がつぎ込まれ、法的にも守られ、実質国営企業と化している。
競争力のある国は、全業界が既得権を持っているのである。
この既得権が、経営健全性を損ない、いずれ、国全体で競争力を失う羽目になる。
これが、先進国病である。
今や世界の先進国は、競争力を失い、新興国レベルに成り下がろうとしている。