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◎ 2014年3月20日 (木) 文化と社会システム

新聞に、日本はスウェーデンのような高社会福祉国家の真似はできないとよく書いてある。
理由は、文化が違うからだそうである。
いつも、その一点張りで何がどう違うかを説明したものは一つたりとも見た事がない。
この事から明らかになるのは、文化は社会システムよりも常に優先され、社会システムのためにわずかでも文化に妥協できる余地はないという事である。
もし、優れた社会システムが従来のそれよりも社会維持がしやすいとするならば、文化のために社会維持が犠牲になるという事になる。
果たして文化を守る事は、戦争や国家破滅の回避より優先されるものなのか。
だとしたら、文化とは一体何であろうか。
文化とは事実上、権力主義の事である。
権力主義とは、人間を支配する事である。
人間支配は、社会そのものよりも優先されるのが現状である。

権力主義では、人間こそが神であり、社会における総ては人間によって動かされると考える。
ただし、裁量権を持っているのは各種団体などの権力者である。
更にその団体間で権力闘争があり、勝った者に最大の裁量権と恩恵が与えられる仕組みになっている。
恩恵とは、権力者にはあらゆる我儘が許されるという意味である。
宗教では、社会は教義の制約を受けるから、人間の社会に対する裁量権は教義を邪魔しない範囲に限定されると考える。
実存主義では、社会を最も維持しやすい手段が選択されるべきであるとし、その手段を道理と呼ぶ。
道理が社会に制約を与えるから、人間の社会に対する裁量権はその分、制限されると考える。
この道理が人間に理解できると考えると絶対主義になり、人間に理解できないと考えると実存主義になる。
道理が人間に理解できないならば、間違っているかもしれないそれを他人に強制する事はできない。
ただし、実存主義の道理は、多くの実存主義者において方向性がほぼ一致している。
マルキシズムや宗教(一部除外)は絶対主義だから、他人にその道理や教義を強制しようとする。

以上より、権力主義は社会よりも文化を、実存主義は文化よりも社会を尊重している事が分かる。
マルキシズムは絶対主義において宗教と共通しているから、カミュはそれを人間の宗教と呼ぶ。
マルキシズムとキリスト教は、思想的にも構造的にも基本的に権力主義だが、部分的に実存主義も採用している。
この構造における権力主義は絶対主義であり、実存主義は裁量権の制限である。




◎ 2014年3月20日 (木) ナフタが成功し、ユーロが失敗したわけ

ナフタ(NAFTA)とは、カナダ、アメリカ、メキシコ間で締結されているFTAの事である。
この三国の中では、メキシコが最も人件費が安いから、日欧の自動車会社がこぞってそこに工場を建設した。
メキシコから関税のかからないカナダやアメリカに自動車が輸出されたわけである。
その結果、メキシコの中間層の人数が増えたから市場が出来、ペソ高になり、カナダやアメリカから別の商品がメキシコに輸出されたものと思われる。
そのため、現在のところ三者はウィンウィンの関係にある。
ただし、メキシコの人件費が高くなった後は、工場が撤退する可能性がある。
メキシコは、今のうちに研究開発力をつけたり、外国から技術を導入しておくべきだろう。
韓国はアメリカとFTAを結んでいるから、メキシコで生産された日本車は、アメリカを経由して韓国に輸出され、韓国車は韓国国内で現在苦戦しているらしい。
日本車の性能とメキシコの人件費と無関税のおかげである。
韓国車が対抗するには、アメリカとのFTAを見直すか、日本とFTAを結んでいる国に工場を移転し、日本市場に参入する事だが、日本もFTA見直しが可能だから、前者の方が得策だろう。
しかし、韓国車もアメリカ市場で売り上げを伸ばしているから現状ではフィフティ・フィフティである。
中国、インド、東南アジアに日欧米が進出し、市場が出来たのもナフタと同じ経路である。
ユーロは統一通貨を導入する事で、一部の国々において実力よりも通貨高になり、輸入がしやすくなったため、最初の内はそこそこ上手く行ったが、輸出がないため、財政が苦しくなってきて失敗した。
また、なぜかナフタのように人件費の安い国に工場が建設される事がなかったため、新たな市場が作られる事がなく、ウィンウィンの関係を構築できなかった。
統一通貨が、それを邪魔をした可能性があるが、EU全体で見ても同じである。
しかし、どの道、総ての国において一定水準の経済競争力がなくては、長い目で見た時には上手くいかないのではないか。
国策として奨学金を出し、外国の大学から外国の企業に就職してもらい、いずれ自国に戻って活躍してくれるのを期待するのも一つの方策だろう。
しかし、自国に産業が育ってない場合は、外国の大学や企業を出てもタクシー運転手になるそうである。
となると、そこも金銭的支援が必要になる。
彼らが身につけた知識や技術が使える設備を国が準備しなくてはならない。
TPPが、ナフタとEUのどちらになるかは分からない。

世界中の総ての国において人件費に差がなくなった時、その先はその手法を使った経済発展は見込めなくなる。
そうなると、ITや機械が人間の仕事を奪う問題が再燃する事になる。
人間の仕事がなくなった時、人間の労働と生活のスタイルはどうなるのかについて考える必要がある。
もし、人間は従来どおり必ず働かなくてはならないとするなら、人間が世直し一揆と称してコンピュータや機械を壊して回る必要があるだろう。

近年、日本の家電メーカーは業績が低迷した。
ビデオがDVDになって、それがハードディスクになったのだが、インターネット利用者が増えたため、テレビ自体が使われなくなった。
また、デジカメやパソコンがスマホやタブレットになった。
液晶テレビやスマホやタブレットは中国・韓国・台湾製が、安価で高性能だから、これらの分野に日本企業は参入できなくなった。
これらが日本企業低迷の要因とされる事から、これまで業績が好調だったのは、洗濯機や冷蔵庫やエアコンなどが売れなくなった分、パソコンや液晶テレビやデジカメが補っていたためだった事が分かる。
最近、イノベーションと呼ばれるのは新製品の事である。
パソコン、液晶テレビ、デジカメに替わる旗艦製品の登場が日本の家電メーカーに求められているが、もちろん、これは運に任せるしかない。
今のところ、政府が医療関係を優遇する政策をとっているから、日本の家電メーカーは医療機器メーカーに変貌しつつある。
日本の家電メーカーも自動車のようにメキシコに工場を移転したら、GEやフィリップス、サムスンにシェア争奪戦を仕掛けられるのではないか。
あるいはTPPを待っても良いだろう。

関税撤廃と人件費の安い国への工場の移転が、今後の主流であるとすると、現在日本政府が採っている日本企業による海外工場からの技術料の日本送金への非関税政策が、日本国内の貧富の差を拡大する問題が出てくる。
この政策のおかげで、現在日本の貿易収支は赤字でも経常収支は概ね黒字である。
しかし、原油輸入問題が原発再稼動で解消されると、経常収支の黒字額が跳ね上がり、円高が顕著になるだろう。
そうすると輸出が出来なくなった日本国内には工場が一つもなくなる事になる。
工場労働者は解雇され、経営陣と研究開発職だけが残り、日本に輸送された技術料は税金が掛からないから、ほぼ全額彼らが独占する事になる。
これでは、日本国内は1%の富裕層と99%の貧困層の国となり、中間層は消滅するだろう。
この構図は、アフリカの石油王とその他大勢の貧困層の構図と同じだが、アフリカの貧困層のように石油パイプラインに穴を開けて石油をちょろまかす事ができないのが大きな違いである。

日経新聞(3/17)で、SPDギュンベル副党首が、現在ドイツは、シュレーダー政権のアジェンダ2010政策のおかげで経済が好調だと言っている。
その政策内容は、社会福祉を縮小し、法人税を下げる事や、企業による株の持ち合い解消などである。
ただし、生活困窮者が出たため、成否に関しては賛否両論で、彼はそれを教訓にアジェンダ2020を提案している。
フランスのオランド大統領も現在アジェンダ2010に傾きつつあるという話である。
現在、安倍政権も消費税増税と法人税削減を目指しているから、日本もドイツやフランスに政策を合わせている。
ただし、フランスの内実は知らないが、日本の追随はドイツと条件が同じとは限らない。
つまり、妥当性の問題である。
ドイツ人自身がドイツの大学は世界ランクが低く実際大したことがないと言っているから、フランスがドイツに研究開発で大きく劣る事はないだろう。
また、フランスにもグローバル企業が多数ある事を踏まえると、ドイツに比べ、既得権が大きすぎるのではないか?
日本とフランスは、アジェンダ2010ではなく、規制緩和で競争社会を形成すると共にアジェンダ2020を目指すべきである。
最後のセーフティネットである実存主義社会も導入すべきである。

発展途上国において、人口が増加するのは、仕事も娯楽もなくて暇で他にする事がないかららしい。
という事は、経済が発展して先進国並みになれば遊び方も多様化し、出産も減るという事になる。
そのため、世界的な人口増加は心配する必要がない。




◎ 2014年3月23日 (日) ネオ東京(1)

どしゃぶりの雨の中、冷たいアスファルトの上で、一人の若者が倒れている。
(夢破れて挫折し、俺の人生はこのまま終わってしまうのか・・・)
思わずつぶやいた。
「そうだ。ネオ東京へ行こう。そこで人生をもう一度やり直すんだ」
彼は、よろよろと立ち上がり、ゆっくりと、だがしっかりとした足取りで歩き始めた。
君よ来たれ。明るい生活がそこにある。
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広い道路と広い駐車場、大きな商業施設と大きなアパート・マンションで構成される東北地方新都心・ネオ東京は、震災後の広大な荒地に生まれた。
太平洋沿岸に点在していたさびれた田舎町を離れ、高台の巨大都市へと人々は移住した。
どこまでも続く広い道路は、交差点も少なく、当然ながら信号機も少ない。
渋滞の心配がなく、広い無料駐車場が至る所にあるこの街には、多くの企業や工場が高い関心を示している。
世界的な経済環境の激変下にある現代社会において、一ヶ所に定住するのは、もはや限界がある。
移住生活を前提とした借家都市に日本中の企業と会社員が望みを託そうとしている。
会社員にも住民にも最大限の利便性を提供できるグローバル・スタンダードな都市が満を持して登場。
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◎ 2014年3月24日 (月) ネオ東京(2)

子供達の明るいはしゃぎ声で目が覚めた。
(ここは・・・)
白い簡素なベッドの上だ。
「お目覚めですか?ご加減はいかがですか?」
見上げると若い看護師が優しく微笑んでいる。
僕は上半身を起こし、
「ええ、おかげさまで・・・」
とまで言ったところで、不意に左の頬をピシッと張られた。
驚いて看護師の顔を見ると意地悪そうな目つきでニヤニヤしながら僕を見下ろしている。
(という事はさっきの子供の声も・・・)
確かに、ここは現実だ。僕は安心してホッと息をついた。
窓の方へ向き、外の様子を眺めた。
地上30メートルはあるだろうか。高い場所にこの病室はあるようだ。
遠くの方に『ようこそ、ネオ東京へ』と書かれたアーチが見える。
遂に僕は目的地に着いたらしい。
線路の向こう側に大きなドーム型の建物とその横に白くて高い建物が見える。
おそらく、帝都ドームとクリスタルタワーだろう。
という事は、その間に帝都駅があるはずだ。
ドームの向こう側に見える黒っぽい建造物は、帝都大学だろう。
その隣には、ドーム型の高分子化学研究所もあるはずだ。
ネオ東京や帝都駅、帝都大学については、その名前の使用をめぐって最高裁まで国と激しく争った経緯がある。
大学の壁色を眺めているうちに、僕は、ちょっぴり不安を感じた。
ワクワク、ドキドキ夢いっぱい!
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道州制の導入により、区割りが変わり、高度な自治権が与えられると同時に、一州一大都市の建設が推奨され、大都市が出来ると同時にその付近の街は吸収された。
その流れを受けて、ネオ東京構想も生まれた。
ネオ東京の中心には、帝都駅があり、新幹線が通っている。
北は仙台、南は東京方面、西は新潟に繋がる。
新幹線と平行して帝都鉄道も敷かれている。
帝都鉄道は、夜間、貨物列車が走るから意外とニーズも安定している。
帝都駅近くには、多目的施設の帝都ドームがあり、スポーツ観戦やコンサートに利用されている。
東北地方で最も高い建物であるクリスタルタワーは、ショッピングモールだ。
壁面が新素材でコーティングされ、太陽光を浴びると虹色に輝き、夜間もその特性を活かし、色とりどりのLEDでライトアップされることからそう呼ばれている。
文部省の肝いりで帝都大学に併設された高分子化学研究所は、新素材の開発や遺伝子解析に利用され、産学連携による産業活性化が期待されている。
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◎ 2014年3月25日 (火) ネオ東京(3)

「少し体が衰弱しているから、2・3日安静にした方が良いね。下の階で薬をもらって」
初老の医者が言った。
僕は礼を言い、階下に降り、受付で帝都カードで清算し、隣接する薬局で薬をもらって病院を後にした。
外に出ると空は晴れているが、ビルの谷間で日陰になっていて、風が強く吹き付けていた。
(さて、これからどうしようか。先ずは家から探すか・・・)
僕は、ズボンのポケットからタブレットを取り出し、近くの不動産屋を検索した。
不動産屋では、敷金なしで家具付きのワンルームに決めた。
店員は、やたらと「あんなのはホテルと一緒ですよ」と他の物件を勧めてくれたのだが、僕としてはまだこの街でやっていける自信がなかったからだ。
でも、「ああいう所は入る時はカネは要りませんけど、出る時に多額の追加料金を請求されてトラブルになる事が多いんですよ」とも言ってたっけ。
1泊2千円のホテルがあったから、そっちの方が良かったかな?
不動産屋なんかどこも半分詐欺みたいなもんだからな。
とりあえず、家が決まったから、再びタブレットを取り出し、市役所のサイトで住民票を移した。
今日は、電気・ガス・水道の開栓だけしてもらって、もう寝る事にしよう。
明日は明日の風が吹く!
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帝都銀行発行の帝都カードは、預金の出し入れは元より、クレジットカードとしても使える多機能カードだ。
健康保険証機能もあるから、身分証明書にもなるし、ネットの仮想モール運営会社とも業務提携しており、ポイントカードやクーポンとしても使え、バス、電車、タクシー、ガソリンスタンドなどのプリペイドカード代わりにもなる。
紛失した場合は、すぐに利用を差し止め、その日のうちに発行できるため、持ってて便利で安心な一枚である。
ネオ東京は、自前で二重リング状の光ファイバー網を敷設しており、市街全域を網羅したWiFiスポットで、どこでも誰でも無料でネットに接続できる。
ネオ東京では、市民が増える事を歓迎しており、転入者には3ヶ月間毎月3万円の住宅補助を受けられる転入優遇制度がある。
補助金は、帝都カードへ毎月指定日に送金される。
ネオ東京は、手続きが簡単で補助もあり、入居がしやすい街である。
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◎ 2014年3月25日 (火) ネオ東京(4)

体調もずいぶん良くなったし、今日から職探しをするつもりだ。
だが、僕は大学を卒業してすぐにフリーターになってしまったから、就職するために必要なスキルがほとんどない。
そこで、ネットで職業訓練所のサイトを見る事にした。
最近は職業訓練所のコースが多様化して、職業別訓練コースもある。
車や服の販売員や事務職、SEなどの他にイラストレーターや作曲家などもある。
僕は、そのうちの営業職コースを受講する事にし、応募した。
訓練所は、自宅から駅を跨いだ場所にあり、その間には広い道路もあるのだが、この道路は信号機が少ないから歩行者にとっては少々不便である。
でも、都地下を通れば、ほとんど信号待ちも遠回りもせずに目的地まで行ける。
都地下は、少々入り組んでいるから慣れるまで不便だが、タブレットのGPSを使えば、初心者でもあまり迷わないだろう。
営業職コースでは、電話応対や名刺交換などのお決まりのビジネスマナーから始まり、会社の仕組みやアポ取り、商談の進め方なども教えてくれる。
講義が始まった。
「最近は、アポは電話だけでなく、ネットでも取れるようにする企業が増えました。より多くの情報を効率よく入手できるようにするためです。サイトに自社と名前、メールアドレス、用件、希望日時の範囲を入力してください」
僕の新しい人生も始まった。
君の未来を応援します。
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帝都駅を中心に都地下と呼ばれる地下街が広がっており、交通量の多い地上での移動の困難さを回避してくれる。
駅にも通じているから、雨の日でも傘を差さずに目的地まで行けるだろう。
教育施設の充実もネオ東京の魅力の一つである。
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以上、全4話完結。
ネオ東京のモデルは西神中央、都地下はサンチカタウン。
クリスタルタワーはあべのハルカス、高分子化学研究所は鈴木光司「ループ」。




◎ 2014年3月27日 (木) 野の花になろう

昔、小学校で「人は一人では生きていけない。花も一人じゃ咲けないものね。だけど時には〜♪」という歌を唄わされたのだが、この歌詞の意味は、権力主義の肯定である。
一人で咲けない花は、人間に水や肥料をもらわないと生きていけない花の事である。
しかし、この花は、自然の花ではなく、人間が長い時間をかけて、品種改良を重ね、大きく綺麗な花弁を手に入れた代わりに水や肥料を人間からもらわないと生きることすらできなくされてしまった人造の花である。
花は人間に世話してもらえば生きていけるが、人間は誰からも守ってもらえないから、自分達で社会を維持していかなくてはならない。
もし、社会維持に失敗したら、戦争、あるいは社会崩壊が待っているだけである。
ところが、歴史上、戦争も社会崩壊も経験しなかった国は世界中に一つたりともないのである。
歴史上、あらゆる国々が権力主義だったのであり、それを肯定する事は人間の生存を否定する事になる。
次に、この歌を作った作詞家や作曲家の身分についても考察しよう。
作詞家や作曲家は、歌を社会に提供するが、もし非買運動でも起こされたら、廃業の憂き目に遭う。
そのため、この歌詞は、社会から反発を受けないようにするため、社会に合わせるしかないという意味に取れる。
しかし、歌は基本的に、愛だの友情だの同情だのがテーマになっており、権力主義には真っ向から対立しているのである。
平和な時なら、それでも見逃してくれるが、現在のような荒んだ社会環境では、誰も芸術に見向きもしなくなり、廃業が待っている。
芸術活動と実生活が二律背反であった事の報いを現在、彼らは受けているのである。
芸術家は、彼のように権力主義を肯定したとき、確実な死しか待っていないのである。
次に、一般的な人生についても考察する。
「山椒大夫」において、安寿と厨子王の母は、贅沢な生活のおかげで一人では何も出来なくなった。
その結果、簡単に騙されて、人攫いに売り飛ばされてしまう。
権力主義者は、自分の意見も判断も持っていないため、一切自発的な行動ができない。
そのため、国家や世間に自分の身柄を預ける事になり、安寿と厨子王の母のようにいつかは人生を台無しにする日がやってくる。
野の花のように、自分の人生も判断も他人任せにせず、自律的な人生を歩む意志を持つならば、そうした呪縛から逃れる事ができるのである。
つまり、野の花のような人生とは実存主義の事である。




◎ 2014年4月5日 (土) 国家主権と人権、ファシズムとサンディカリスムと天皇制

現代用語の基礎知識2000

『サルバドル・アジェンデ(Salvador Allende)〔中南米〕
チリの大統領(1970−73年)。社会党員として、共産党、社会党、急進党などが、全人口の10%の寡頭制支配層と帝国主義に反対して結集した統一戦線=「人民連合」を率いた。38−40年の「人民戦線」政府を樹立させたチリの経験・伝統が生かされたのであるが、中南米で統一戦線の重要性をしめすものであった。「人民連合」政府とともに、その大統領だった彼にとどめを刺した反動クーデターを起こしたピノチェトが、政権掌握後、人権侵害の罪で、ロンドンで逮捕されたことは、民主的統一戦線に反対する者がたどらざるをえない運命をもしめすものである。

ピノチェト逮捕(Arrest of Pinochet)〔中南米〕
一九九八年一〇月一六日、チリの元大統領のピノチェト終身上院議員がロンドンで逮捕された。七三年九月クーデターで人民連合政権( 別項)を倒壊した後の独裁制下での人権侵害のかどでスペインのガルソン判事が逮捕要請をしたのにイギリス警察がこたえたもの。イギリス高等法院は一〇月二八日、元国家元首には免責特権があるというチリ政府とおなじ理由で、逮捕を不当としたが、イギリスの最高裁にあたる上院では一一月二五日、虐殺・拷問のような人権侵害行為は免責の対象とはなりえないとして、高等法院の判断をくつがえした。ストロー内相は一二月九日、スペインへの身柄引き渡し司法手続きの開始を決定したが、一七日、前の上院の決定には、ピノチェトを告訴しているアムネスティ・インターナショナルの資金調達に責任を負う議員が裁判官として加わっていたという弁護側の異議をいれて、前の決定を無効とし、審理を振り出しに戻した。九九年一月一八日に開始された上院の再審理は、裁判官を五名から七名に増やし、チリ政府の意見も聴取するなど、慎重を期して、三月二五日、イギリスで拷問罪が犯罪者引き渡しに該当すると規定された一九八八年九月二九日以降の容疑にたいしてのみ責任が問えるという「玉虫色」の判断を下した。これにもとづき、四月一五日、ストロー内相は身柄引き渡し手続き開始を再決定した。基本的には、国家主権よりも人権のほうが法的に重視されるべきだという、最近の国際法の流れに沿うものとなったが、チリ政府はその後も「裁判主権」を主張する一方、スペイン政府に「友好的調停」の名目で、身柄引き渡し要請を取り下げるよう働きかけるなど、画策してきた。たしかに、ピノチェトはチリで裁かれるべきであるが、「死のキャラバン」裁判が示しているように、それはほとんど不可能である。「友好的調停」というのはスペイン政府も明言しているように「行政権の司法権にたいする介入」にほかならず、民主主義への冒涜である。ここで問われているのはチリの「民主主義への過渡」実現のためにはなにがなされるべきかであろう。』

『民主的統一戦線に反対する者がたどらざるをえない運命』や『国家主権よりも人権のほうが法的に重視されるべきだという、最近の国際法の流れ』とあるのだが、アメリカ人が、「アメリカは人道問題で軍事介入は行わない。なぜならば、人道問題は世界中にあるからだ」と言う最近の動きはそれに逆行している。
多種多数の反政府ゲリラが活動するシリアは、民主的統一戦線と呼ばれるにふさわしいが、ピノチェトの時のような他国による政治介入は見送られている。
中国においてチベット僧が、強制還俗させられているのも人道問題だが、国際的批判は少ないようだ。
チェチェンも民主的統一戦線と呼ばれるにふさわしかったが、映画館のテロはまずかった。
時代が変わったという事だろう。

『オジャランPKK党首に死刑判決〔中東〕
一九九九年六月二九日、トルコ・マルマラ海のイムラル島で開かれていた国家治安裁判所は「クルド労働者党(PKK)」のアブドラ・オジャラン党首に死刑判決を下した。オジャランは同年二月一五日、潜伏先のケニア・ナイロビのギリシャ大使館を出て空港に向かう途中、トルコ派遣の治安要員に拉致、イムラル島に連行され、国家反逆罪で裁かれた。弁護団は七月五日、刑事・民事最高裁判所に上告した。最高裁が上告を棄却しても、死刑執行には大国民議会(国会)の承認と大統領の署名が必要である。一方、欧州連合(EU)諸国はそろって死刑判決に遺憾の意を表明した。
オジャランは五〇年頃、トルコ南東部に生まれ、アンカラ大政治学科を中退。七八年、共産主義の実現とクルド人の多く住むトルコ南東部の分離独立(後に自治要求に緩和)を掲げてPKKを創設し、八四年以来武装闘争を続けてきた。一時は、兵士五万、シンパ三七万五〇〇〇人を誇った。この事実上の内戦の死者数は三万人以上に上る。オジャランは九八年一〇月、トルコ政府の圧力で、長年の滞在先シリア・ダマスカスを退去した。一一月イタリア・ローマ入りして逮捕されたが、九九年一月追放された。二月二日からナイロビのギリシャ大使館に潜伏していた。PKKは、イラク北部侵攻などトルコ治安当局の徹底したPKK拠点掃討作戦で壊滅状態に近いとされる。

民族と宗教〔西欧〕
コソボ紛争の解決が長引いたのは、NATOが、ミロシェビッチの民族浄化は認められないが、一方コソボの独立も認められないという複雑な立場に立たされたからである。では何故NATOが、コソボの独立を支持できなかったのか。それは独立を認めれば、KLAの武力による独立を容認することになり、バルカンに民族紛争の火種を播く心配があったからである。限りなく独立に近い自治を認めながらセルビア共和国の支配下に入れる、その線でG8合意はまとめられている。欧州にはゲルマン、ラテン、スラブの3大民族がある。大民族間には文化の違いやそこから生ずる思考上の差はあるが、キリスト教という同じ倫理基準を信奉しているため、社会主義と資本主義のイデオロギー対立から脱却した現在、紛争の心配は少ない。問題は小民族が人種差別を受けたり、権利を極端に制限された場合、他民族からの支配を嫌って独立を求めるケースである。独立運動を武力で阻止すれば、IRAやKLAのような武装集団が過激な活動に出ることは充分にありうる。宗教もプロテスタント、カソリックの紛争は30年戦争(1618−48)で克服した。ドイツではつい最近までマルチン・ルターの肖像が100マルク紙幣を飾っていたが、カソリックからの反対の声を聞いたことがない。宗教の問題点は原理主義、特にイスラム原理主義が武力をもって排他的な行動に出た場合どう対処するかという難問である。民族と宗教は21世紀の最重要のキーワードである。』

NATOの考え方は、人道問題においては国家主権を認めないが、武装蜂起による独立や革命も認めないというものだった。
しかし、リビア内戦では、武力革命も空爆支援した。
シリア内戦では、打って変わって、人道問題も武力革命もノータッチである。
イラクにおける化学・生物兵器の保有については、人道問題も武装蜂起も関係なく、空爆対象となっている。
チベットでは、焼身自殺による独立も認めていないから、武装蜂起でなくても独立そのものを認める気がない。
NATOによる軍事介入には事実上、方針は存在せず、デタラメに理由を後づけしているだけであるのが分かる。
これでは、世界に混乱を撒き散らすだけだろう。
そのNATOの働きは、加盟各国にほとんど利益をもたらしていない事を現状が示している。

『陰謀説(Conspiracy theory)〔中東〕
特定の人間ないしは人間集団の陰謀によって歴史が動かされるという考え方。中東は、1948年のイスラエル建国はじめ歴史の動きが激しく、また多様だったせいか、この陰謀説が盛んだ。「イスラエルは、ユダヤ人が全世界を支配するために使う基地」というのも、その1つ。この説は、有名な反ユダヤ主義(anti-Semitism)の偽書「シオンの長老たちの議定書」(Protocols of the Elders of Zion)を根拠にしている。このほか、アラブ人がよく口にする陰謀説として、「西側は、中東をコントロールする方法としてアラブ・イスラエル紛争を引き起こし、続けさせている」などがある。陰謀説は大衆にとって理解しやすい考え方なため、政権側が大衆操縦のために使うケースが多い。』

日本においても衆院選前に海外投資家の陰謀で円安株高が顕著になったし、インドにおいても西洋人がイスラム教徒とヒンズー教徒を仲違いさせてパキスタンができた。
イスラエルがイスラム教徒対策であっても不思議はない。
NATOの行動原理は、貧困と独立に対する恐怖である。
アフリカ、アラブ、南米、ロシア、東欧、カリブ海などの貧困国の不満や自国内の貧困層による独立運動などが欧米の脅威であり、それらへの対策がNATOの義務というわけである。
彼らは貧困国の独立には寛大だが、自国内の独立には反対なのである。
敵対する貧困国が独立で仲違いして疲弊するなら、思う壺だが、その独立機運が自国内でも高まるのを恐れているわけである。
人道問題や民主主義などは、とってつけた言い訳に過ぎない。
日欧米にとって貧困だけが敵なのである。
これを貧困国の富裕国への逆襲として第二次世界大戦に結びつける人々もいるようだが、植民地を奪い取ったのでは彼らと同じだし、ファシズムも容認できないだろう。
しかし、結果的には、大戦後、多くの植民地が富裕国から独立を果たし、三国同盟は一定の成果を挙げたことにはなる。
結局、大戦で得をしたのは植民地だけだったのである。

『フアン・ドミンゴ・ペロン(Juan Domingo Peron)〔中南米〕
アルゼンチンの大統領(1946−55、73−74年)。30年代後半、駐イタリア大使館の武官として、ファシズムに傾倒。未組織労働者の支持を得て、共産主義的労働運動を弾圧。政権掌握後は、反米をかかげ、イギリス資本の支配する鉄道を国有化し、経済的独立を宣言した。しかし、それを可能にした戦時中に蓄積された外貨準備が枯渇すると、合衆国に資金を仰がざるをえなくなり、民族主義を放棄。貧民救済もゆきづまり、保守派軍部のクーデターで、スペインに亡命。政権に復帰するが、すでに老齢で、まもなく死亡。ブラジル30年代のバルガス政権も、52年のボリビア革命を指導した民族革命運動も、従属国における「ファシズム」=「人民主義」と言える。』

ムッソリーニのファシズムは、反民主、反共でサンディカリスム(組合主義)による独裁体制を目指したものらしい。
共産主義とサンディカリスムの違いについては、西洋ではマルクスとバクーニンの対立、日本ではアナボル論争があったらしい。
共産主義が武力革命によって政権を奪取し、企業を総て国営とするのに対し、サンディカリスムは労働組合によるゼネストなどの直接行動で議会政治を排除し、労働組合による統治を目指すものらしい。
広義のファシズムは、国粋主義的、全体主義的な政体を指すが、本来のファシズムはサンディカリスムだったというわけである。
ペロンは、サンディカリスムに民族主義を加味して、反共と外資支配払拭で貧民救済社会構築を目指したのだが、これが、彼のファシズム解釈だったわけである。
日本においては、天皇制は弱者救済のためにあると主張する人々がいるらしい。
この意味は、天皇は革命のためにあるということである。
大化改新や壬申の乱、建武新政、明治維新などに見られるように天皇が革命の大義名分にされてきた事実と本居宣長などの国学者の主張が、弱者を苦しめる腐敗政治への反乱を支持してくれると考えているのだろう。
天皇制は、易姓革命の日本版というわけである。
以上より、サンディカリスムと天皇制には、弱者救済という共通点があることが分かる。
弱者を救済しようとすると、なぜか、民族主義が国粋主義に、民主主義や封建制が全体主義に、平和主義が侵略主義になってしまうというわけである。
カミュやパリコミューンやバクーニンや大杉栄が目指したサンディカリスムは、これだったのか?
サンディカリスムの失敗は、経営者よりも労働者の方が身分が上になった事により、企業の利潤追求に支障をきたしたからではないか?
ペロンは企業競争力において外国に負けたという事だ。
企業経営は、経営者と労働者の折衷で成立するのだろう。
日本においては、大政翼賛会が、政府が民間企業を統制するコーポラティズム(協調組合主義)だったらしい。
広辞苑の説明では、共産主義とサンディカリスムとコーポラティズムの違いが分かりづらい。
ペロンの人民主義はポピュリズムと呼ばれている。
過当競争によって労働者の収入が減るから、法的に企業を間引いて競争を緩和したり、労働者の収入を底上げしたりするのは、サンディカリスム(コーポラティズム)と考え方が同じである。
その結果、その国は、それをしない国に企業競争力において負ける事になる。
そのため、サンディカリスムはポピュリズムと呼ばれるのだろう。
過当競争が望ましくないとするなら、寡占が望ましい事になるが、その場合、その業界は暗黙のカルテルによって独占に近い価格設定になるだろう。
通信、電力、ガス、水道などのインフラは、外国との競争がないから、寡占になりやすいが、それ以外の業界は、世界シェアを上げることでしか寡占を作れない。
しかし、いつかは、あらゆる業界が寡占になるだろう。
寡占になると困るのは、物価が高いために支出が収入を上回る貧困層である。
中国においては、太陽光パネル企業が政府に間引かれ、日本においては消費増税が売値に反映されるよう法制化されているが、これらサンディカリスムは、貧困層対策と外国との競争対策が必要にも拘らず、両政府は全く考慮していない。
また、あらゆる業界が寡占になれば、生産効率が高いため、世界中に失業者があふれるはずであり、その対策も必要である。
過当競争を否定するポピュリズムは、これらの対策が総て必要だが、実質不可能だろう。
労働者待遇よりも企業競争力向上を優先するとアジェンダ2010になってしまい、国内景気は良くなるが、国内に生活困窮者を出す事になるし、競争に負けた外国経済も低迷させる。
EUにおいては、ドイツの勝利は、フランスの敗北に直結しているらしい。
一国の勝利が他国の敗北になるという事は、現在、グローバル経済は限られたパイの奪い合いになっているという事である。
これは、市場が飽和状態になって、現在の社会構造が限界に来ている事、すなわち、レーニンが予言した帝国主義に到達した事を意味する。
共産主義が、これを経済あるいはイノベーションの限界と考え、それ以上の経済発展は不要とし、競争をなくして、富の公平な分配だけすれば良いと考えたのは妥当に思われる。
しかし、それが計画経済になってしまったために失敗した。
となると、サンディカリスムのトロツキズム、すなわち、サンディカリスムやコーポラティズムを世界中で採用すると同時に国民の生活レベルも下げる政策が考えられる。
政策で競争が阻害され、経済活動が緩やかになるから、生活レベルも下げざるを得ない。
確かにこれでは、経済発展は見込めないかもしれないが、サンディカリスムの三つの問題の内の二つ、外国との競争と世界市場寡占の進行は食い止められるだろう。
ただし、最低賃金上昇により物価高になり、失業者が困る事になる。
また、消費者の嗜好が変わって物が売れなくなった場合、経営危機に陥る可能性もある。
世界各国の量的緩和は、サンディカリスムみたいなものであり、そのため、現在既にサンディカリスム&トロツキズム状態になっているとも言え、この問題も出ている。
この問題に対し、富士カラーフィルムのように業種転換に成功した企業もあれば、リストラを余儀なくされる企業もある。
ここでのサンディカリスムやコーポラティズムは、自由競争経済における政府による企業倒産防止と労働者待遇改善の事であり、トロツキズムは、その政策を世界各国で採用する事である。
量的緩和は、企業の倒産防止だけでなく、財務体質も改善させるから、企業競争力向上の役割もある。
量的緩和で国民は損をし、企業は得をするから、国民が増税されたり社会保障を削減され、企業が減税されるのと同じであり、量的緩和は、アジェンダ2010に沿っている。
ただし、量的緩和は、不公平であると同時に通貨価値を毀損し、財政赤字を増大させるデメリットもある。
共産主義において、ニーズのない製品の大量生産設備稼働率低迷が経済の足を引っ張るように、大企業においても大型設備は、消費者ニーズの変動に対応できない。
仮に設備を減らしても従業員は労働基準法があるから、おいそれと解雇できない。
そのため、サンディカリスム&トロツキズムでも企業業績は悪化するが、業種転換による新興企業も増えており、全体としては失業の著しい悪化はない。
大企業が倒産し、下請け企業が大企業のリストラ社員を雇い、新規ブランドを立ち上げる動きである。
サンディカリスム&トロツキズムは、あらゆる業種でこの動きを続けるのではないか。
大企業と寡占がなくなり、中小企業と過当競争に戻るこの動きは、自浄作用による産業初期化と言えるだろう。
しかし、世界には貧困国が多く、まだ市場開拓の余地は多いにある。
貧困国に工場を作り、その国の経済と経済競争力と教育レベルを高め、中間層を作るのが先ではないか。
資本主義は、労働環境の悪化を招くし、貧富格差も広がり、中間層が減る。
共産主義は、計画経済が需給のアンバランスを生み、景気を低迷させ、大きな権力が汚職を生む。
サンディカリスムとコーポラティズムは、調整経済が物価高をもたらし貧困層を苦しめ、大きな権力が汚職を生む。
資本主義&実存主義社会なら、中間層が増え、景気の変動が少なくなる。
経済のイデオロギーとしては以上、4つ考えられるのだが、利点と欠点を理解した上でどれを採用するか決めるべきだろう。
実存主義における弱者救済は、世界に一人でも不幸な人がいれば、それはいつかは誰かの不幸となるだろうという道理に基づくものである。
実存主義の目指すのは、共産主義やサンディカリスムのような労働者待遇改善ではなく、人権尊重や既得権撤廃である。
それらのためには、巨大権力による理不尽と横暴を認めるわけにはいかないという立場をとる。
その結果、反権力主義、反国家、反世間となる。
国家も世間も権力主義だからである。
現に多くの人々が、国家や世間によって理不尽な生活を余儀なくされている。
これは、不可避なものではなく、意図的にそうされているのである。
権力主義者が道理を知らないことが原因である。




◎ 2014年4月14日 (月) 企業通貨

不景気になると収入が減る。
収入が減ってもデフレなら生活に支障はない。
しかし、それは税金がない場合に限る。
デフレでも税金は下がらないから、収入に占める税金の比率が高まる。
そのせいで、デフレでも庶民生活は成立しなくなる。
まして、不景気で税収が減ったから増税だとなると話にならない。
これが、所得が減るとデフレでも生活が成り立たなくなる理由である。
不況時において、国民にとって最大の脅威は税金である。
不況の原因は既に説明したとおりであり、いくら国民が政府に景気対策を期待しても政府に出来る事は何一つない。
現在、幾分か景気が良くなっているような報道がされているが、そういつまでもこの状況が続くとは俺は思っていない。
俺が政府に望むのは景気対策ではなく、税の減免と国民の生活レベルを下げさせる事である。
アベノミクスは、すればするほど貧富の差が拡大し、社会状況と国民生活を悪化させるだけである。
この先に待ち受けるのは、既得権に怒り心頭の反政府組織によるデモである。
それを回避しようと思えば、政府には対外戦争しかない。
あるいは、日本企業を海外に移転させて逆輸入し、外国の中間層を増やして輸出しやすくするかである。
そうすれば、国民はデフレで助かるし、企業も市場が増える。
逆輸入が増えれば、経常赤字から円安になり、輸入物価は上がるが輸出しやすくなる。
ただし、外国の中間層ができるまでは、国内に大量の失業者を抱える事になるだろう。
しかし、どちらの方法も自民党支持者は絶対に認めないから、革命か戦争かの二者択一の未来が待っているに違いない。
現在の自民党に支持者を無視する力はない。

企業通貨のメカニズムは、以下のようになる。
@例えば、楽天が楽天通貨を為替取引所などで売却したり、ポイントとして消費者に配布する。
Aその楽天通貨を使って消費者は、それが使える店舗などで買い物をする。
B店舗は楽天に仮想モールの出店料をそれで支払う。他店で買い物も出来るし、店員の給料もそれで支払える。

上の説明では、楽天通貨だけで商品の流通が完結している。
ただし、税金は、為替取引所で国の通貨に交換する必要があるだろう。
店舗は、楽天通貨だけでなく他の企業通貨や国の通貨を使う事ができる。
企業通貨は、国の通貨のように物質化する必要はなく、ビットコインのような仮想通貨で良い。
企業通貨は、変動相場制の商品券みたいなものである。
企業通貨は、ビットコインと違い、通貨の発行元が明白だから、責任の所在も明確である。
企業通貨は、株や社債と同じで、その企業が倒産すると無効になるし、企業の資金集めの手段にもなる。
株は経営権を奪われるし、社債は期日に返済しなくてはならないが、企業通貨にはそれらのデメリットがないから、企業にとっては非常に魅力的である。
仮想通貨は、使用期限付き通貨も使えるかもしれない。
期限付きは無期限よりも市場価値は低いはずだから、買い物をする日に、為替取引所で近日中に使用期限の切れる通貨を調達すれば、より高額の商品を買えるだろう。
ただし、楽天のように仮想モール運営企業が期限付きを発行するときは、注意が必要である。
例えば、消費者が楽天協力店舗で買い物をした通貨が、その店舗が所有している間に期限切れになった場合、店舗に理不尽な損失が生じるからである。
期限付き通貨は原則として、消費者、もしくは発行した企業が所有している時に期限が切れるようにしなくてはならない。
第三者が、それを所有している時に切れた場合は、発行元企業が責任を持って処理する必要がある。
期限付き通貨が使えなくても、企業通貨の利用価値は十分あるから、無理に導入する必要はない。
また、期限付きは、一定量しか為替取引所では扱ってもらえないだろう。
なぜならば、取引所が所有している間に期限切れになると取引所の損失になるからである。
そのため、期限付きの多くは、オークション形式の交換サイトで扱われる事になるだろう。
オークションで買い手が付かなければ、持ち主が自分でその通貨を消費する事になる。
このオークションサイトを使えば、期限付き通貨売買を商売にする事も可能だろう。
ユーロのように複数企業で単一企業通貨を発行する場合は、ECBのような単独の通貨発行機関が必要になるだろう。
企業通貨は、上で説明したとおり、国の通貨と全く同じ理論であり、実用化しても全く問題はないはずである。
企業通貨は、経済と金融と国民生活に変化をもたらす可能性がある。
どんな変化がもたらされるかは実験的ではあるが、世界的に政治、経済、金融、財政において限界状態にある現在、ぜひ、試すべきだろう。
先ずは、特区で試しても良いのだ。




◎ 2014年4月14日 (月) 誰もが大病院に行きたがる訳

20年ほど前、診療所で誤診による死亡事故が相次いで、小さな病院にはまともな設備がなく、精密検査ができないからだとテレビや新聞で言っていた。
そのため、皆、初診を検査機器が充実している大病院でしたがるようになったのである。
診療所での初診勧奨よりも、大病院を増やしてやれば、国民は安心するだろう。
あるいは、素人に自己診断できる知識を提供すべきである。
患者自身に医者並みの診断技術があれば診療所でも安心できるだろう。